【JR九州特集・D&S列車編 Vol.4】キハ183系1000番台・特急「あそぼーい!」
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「列車では静かに」なんて、誰が決めた。
子どもが主役の"走る遊び場"
列車に乗ったら、静かに座る。
走り回らない。
大きな声を出さない。
もちろん、それは大切なことです。
でも…
もし列車の方から、
「もっと遊んでいいよ」
と言ってきたら?
そんな発想を、
そのまま形にしたような列車がJR九州にあります。
熊本から阿蘇・宮地へ。
真っ白な車体に、黒い犬のキャラクターがいっぱい。
その名も、
特急「あそぼーい!」
阿蘇へ行く列車であり、
その名の通り、
"遊ぼう!"と誘ってくる列車です。
主役は、大人じゃない。
「あそぼーい!」最大の特徴。
それは徹底して、
"子どもの目線"
で作られていることです。
象徴的なのが3号車。
ここには親子で並んで座る専用席、
「白いくろちゃんシート」
が設けられています。
しかも、列車がどちら向きに走っても、子どもが窓側に座れるよう工夫されています。
普通なら、
「窓側代わって!」
となりそうなところですが、
最初から子どもが特等席。
さらに車内には、絵本や遊びを楽しめる「くろクラブ」や、
オリジナルグッズなどを扱う「KURO CAFE」もあります。
移動中、子どもに我慢させる列車ではない。
乗っている時間そのものを、家族の思い出にしてしまう。
それが「あそぼーい!」です。
101匹の「くろちゃん」
そして、この列車を語るうえで欠かせないのが、
黒い犬のキャラクター「くろちゃん」。
車体にも、車内にも、
さまざまな表情のくろちゃんが描かれています。
その数は、全部で101匹。
笑っていたり、歩いていたり、寝転んでいたり。
お気に入りの一匹を探すのも、この列車ならではの楽しみです。
景色を見る。
車内で遊ぶ。
くろちゃんを探す。
大人が子どもを列車に乗せる”のではなく、
親子で一緒に列車を遊び尽くす。
そこに「あそぼーい!」らしさがあります。
"鉄道ファンにも刺さる"
もちろん、
「あそぼーい!」は子どもだけの列車ではありません。
1号車と4号車には、"パノラマシート"が設けられています。
大きな前面窓の向こうに、線路が伸びていく。
運転席に近い感覚で、
阿蘇の景色と鉄道そのものを楽しめる特等席です。
そして豊肥本線には、この席との相性が抜群の場所があります。
"立野のスイッチバック"
阿蘇外輪山を越えるため、列車は途中で進行方向を変えながら高度を稼いでいきます。
前へ進んでいた列車が、今度は反対方向へ。
線路が分岐し、先ほど走ってきた区間が離れていく。
ただ景色を見るだけではない。
"鉄道の仕組みそのものがアトラクションになる"
これも「あそぼーい!」の大きな楽しみです。
"実は、かなりのベテラン"
これだけポップな列車ですが、
使用されているのは、"キハ183系1000番台"
登場は1988年。
もともとは「オランダ村特急」として誕生し、その後「ゆふいんの森Ⅱ世」「シーボルト」「ゆふDX」など、何度も姿と役割を変えてきました。そして2011年6月。
大規模な改造を受け、
「あそぼーい!」として豊肥本線に登場します。
ここで注目したいのは、
細かな遍歴そのものではありません。
「登場から30年以上を経ても、
尚、新しい価値を与えられ続けていること」
古いから終わりではない。
塗装を変え、内装を変え、役割を変える。
そして新しい世代の子どもたちを乗せて、また走り出す。
それが、このキハ183系です。
「阿蘇」を走れなかった時代
しかし、この列車には名前に「阿蘇」を持ちながら、
"阿蘇を走れない時代"がありました。
2016年4月の熊本地震。
豊肥本線も大きな被害を受け、
一部区間で長期間運転できなくなります。
「あそぼーい!」も本来の運転区間を離れ、
九州各地で臨時運転を続けました。
そして、
2020年8月8日、豊肥本線が全線復旧。
再び熊本と阿蘇が鉄路でつながりました。
「あそぼーい!」にとって阿蘇は、
単なる運転区間ではありません。
名前の中にまで刻まれた場所です。
だからこそ、
再び立野を越え、
阿蘇へ向かう姿には特別な意味がありました。
"あそぼーい!"が、本来の舞台へ帰ってきた。
そう感じさせる復活でした。
広大な阿蘇。
立野のスイッチバック。
目の前へ伸びる線路。
そして車内を埋め尽くす101匹のくろちゃん。
豪華さを競うわけではない。
速さを誇るわけでもない。
この列車が目指したのは、
もっと単純なことだったのかもしれません。
"列車に乗った子どもが、笑ってくれること"
そして、
その隣にいる大人まで、
いつの間にか笑ってしまうこと。
阿蘇へ向かう時間さえ、
巨大な遊び場に変えてしまう。
だから、この列車の名前は…
"「あそぼーい!」"
心服至極です。
(マイミー)

