【国鉄名車列伝】キハ12・北海道の冬に挑んだ、小さなパイオニア
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【国鉄名車列伝】キハ12・北海道の冬に挑んだ、小さなパイオニア
「北海道で気動車を走らせる。」
今では当たり前の話ですが、1950年代の国鉄にとって、それは決して簡単なことではありませんでした。
本州向けの車両を、そのまま北海道へ持っていけばいい。
そんな甘い環境ではありません。
猛烈な寒さ。
吹雪。
凍結。
そして、容赦なく車内へ入り込む冷気。
そんな北海道の冬に、本気で立ち向かうために生まれたのが、
”キハ12形”です。
始まりは「キハ48200形」
キハ12形が誕生したのは1956年。
当初はキハ48200形を名乗り、
のちの称号改正でキハ12形となりました。
製造されたのは、わずか22両。
ベースとなったのは、
戦後の国鉄気動車を一気に近代化させたキハ10系です。
しかし北海道には、すでにキハ11形100番台が投入されていました。
ところが実際に使ってみると…
「まだ寒い。」
北海道の冬は、そう簡単には許してくれませんでした。
そこで耐寒性能をさらに強化して登場したのがキハ12だったのです。
「二重窓を採用」
キハ12を語るうえで欠かせないのが、
”側窓の二重化”。
外側の窓に加えて、車内側にも内窓を設置。
外気との間に空気層を作ることで、客室の保温性能を高めました。
さらに乗降口と客室の間にも仕切りを設け、
扉を開けた瞬間に冷気が客室へ流れ込むことを抑える。
後のキハ22などへつながっていく、
“北海道仕様”の基本思想がここにあります。
「運転士も寒かった」
興味深いのは、客室だけではありません。
先に投入されていた寒地向け車両では、乗務員室の暖房にも課題がありました。
そこでキハ12では暖房設備にも改良が加えられ、北海道で実際に働く乗務員の環境改善が図られていきます。
カタログスペックだけではなく、
「現場で使って分かった不具合を、次の車両に反映する。」
こういう積み重ねこそ、国鉄車両らしいところです。
でも、”小さい”
ただしキハ12は、あくまでキハ10系。
後のキハ20系などと比べると、車体は細く小さい。
搭載するDMH17系エンジンの出力にも余裕はなく、
軽量な車体で性能を稼いでいました。
後年のキハ40形などと並べれば、
「こんなに小さかったのか」と思うほどです。
しかし、その華奢な車体で北海道各地のローカル線を走り続けました。
やがてキハ22形など、より本格的な北海道向け気動車が登場すると主役の座を譲り、
1980年までに国鉄線上から姿を消します。
「そして、約20年後に“復活”する」
ところがキハ12という形式名は、
それから約20年後思わぬ形で再び全国区になります。
1999年公開の映画、
「鉄道員(ぽっぽや)」
高倉健さん演じる駅長・佐藤乙松が守り続ける終着駅
「幌舞駅」
そこへ雪をかき分けるように現れる一両の気動車。
劇中でその車両に与えられた番号が、
「キハ12 23」でした。
「実は、本物のキハ12ではない」
ただし撮影当時、
本物のキハ12形はすでに全車引退していました。
そこで白羽の矢が立ったのが、
JR北海道のキハ40 764。
前面を大きく改造し、
古い北海道形気動車を思わせる姿へ変身。
塗装も国鉄時代の気動車を思わせるものとされ、
映画の世界に合わせた“キハ12”が作られました。
つまり映画に登場したキハ12 23は、
実在した”キハ12”そのものではありません。
しかも実車のキハ12形は22両しか存在していないため、
「キハ12 23」という番号自体も架空。
それでも妙に違和感がない。
むしろ、「北海道の片隅で最後まで働いていそうな気動車」
として、これ以上ないほど作品世界に溶け込んでいました。
「なぜ“キハ12”だったのか」
個人的に面白いと思うのはここです。
もし劇中車がキハ40のままだったなら、
あの映画の印象は少し変わっていたかもしれません。
キハ12という形式名には、
小さな車体。
古い気動車。
厳しい北海道の冬。
地方ローカル線。
そんな昭和の北海道鉄道を連想させる響きがあります。
映画では、車両そのものが主人公ではありません。
しかし駅長、駅舎、雪景色、そして一両の古びた気動車。
その全部が揃うことで、
“鉄道員が守ってきた時間”
を感じさせる世界が完成していたのではないでしょうか。
本物以上に有名になった「キハ12」
皮肉なことに、本物のキハ12を知らなくても、
「鉄道員」のキハ12を知っている人は多い。
映画によってすでに消えていた形式名が、
もう一度人々の記憶に刻まれた。
これは鉄道車両として、かなり珍しい第二の人生だと思います。
「北海道形気動車の礎」
キハ12は、決して派手な車両ではありません。
製造数も22両。
特急でも急行でもない。
しかし、二重窓。
客室とデッキの仕切り。
暖房設備の改良。
北海道という特殊な環境で鉄道を走らせるために、
一つひとつ答えを出していった車両でした。
そして引退から約20年後。
映画の中で、
“北海道の鉄道そのものを象徴する車両”として復活した。
「キハ12形」
北海道の冬と戦った、小さなパイオニア。
そして映画「鉄道員」によって、
世代を超えて記憶に残る一両となったのでは…
と思うのです。
(マイミー)

