【なぜ琴平まで走る?】サンライズ瀬戸「延長運転」の舞台裏

【なぜ琴平まで走る?】サンライズ瀬戸「延長運転」の舞台裏

マイミー

今年も、
JR四国から秋の臨時列車についての発表がありました。
その中に、今年もあの列車の名前があります。

寝台特急「サンライズ瀬戸」の琴平延長運転。

東京を21時50分に発車したサンライズ瀬戸は、通常なら翌朝8時02分、高松に到着します。
しかし指定された日だけは、そこで旅を終えません。

高松からさらに多度津、善通寺へ。
そして8時39分、終点・琴平まで走ります。

東京から約800km。

夜の東京駅を出た寝台特急が、翌朝には「こんぴらさん」の玄関口に立っている。

ところがこの琴平延長運転、路線図をよく見ると少し妙です。
琴平へ行きたいのであれば、本州から瀬戸大橋を渡ったあと、そのまま多度津方面へ向かえばいい。
それなのにサンライズ瀬戸は、一度高松へ向かいます。
そして高松で進行方向を変え、今来た方向へ戻るように走って琴平へ向かう。

なぜ、そんな走り方をするのでしょうか。
そもそも、なぜ延長先は琴平なのか。
そして、なぜ毎日ではなく特定の日だけなのか。

実はこの少し不思議な運転には、
「サンライズ瀬戸」という列車の役割と、
夜行列車だからこそ成立する旅の形が見えてきます。
本州から瀬戸大橋を渡ったサンライズ瀬戸は、宇多津付近から高松へ向かいます。
琴平へ行くだけなら、高松へ寄らず、そのまま多度津方面へ向かった方がずっと素直です。

しかし実際には、いったん高松まで行く。

そして高松で進行方向を変え、再び坂出・宇多津方面へ戻り、多度津へ。
そこから土讃線に入り、善通寺、琴平へ向かいます。
つまり東京から琴平を目指す列車なのに、高松に寄るため一度「行き過ぎる」のです。

このため延長運転の日は、坂出付近を同じ列車が朝のうちに二度通ることになります。

最初は瀬戸大橋を渡って高松へ向かう
「いつものサンライズ瀬戸」。

そして二度目は、高松から琴平へ向かう列車として。
同じ285系が向きを変え、先ほど走った区間をもう一度走る。
時刻表だけを眺めていると見落としてしまう、琴平延長ならではの光景です。

では、なぜこんな運転方法になっているのでしょうか。
理由は、この列車が最初から「東京―琴平」の列車として設定されたものではないからです。

あくまで本来のサンライズ瀬戸は、
東京―高松を結ぶ寝台特急。
まず高松まで、本来の役割を果たす。
そしてその列車を、さらに琴平まで延ばす。

だから高松を飛ばすことはありません。

この一見遠回りに見える運転こそ、
「延長運転」という言葉そのものなのです。

そして、この運転が始まったのは2014年。

きっかけは、瀬戸内海国立公園指定80周年でした。
2014年秋、金曜日・土曜日・休前日の東京発列車を中心に、高松―琴平間の延長運転が実施されました。
本来であれば、期間限定の観光企画として終わっていても不思議ではありません。

しかし終わらなかった。

翌年以降も設定され、その後も繰り返されることになります。
そして10年以上経った現在も、サンライズ瀬戸は琴平まで走っています。

それでも、なぜ延長先が松山でも高知でもなく「琴平」なのでしょうか。

答えの一つが、金刀比羅宮です。

東京を夜に出る。
車内で眠る。
朝、目を覚ませば四国。
そして列車を降りれば、そこは「こんぴらさん」の玄関口。

飛行機や新幹線でも四国へ行くことはできます。
しかし「夜に東京を出発し、眠っている間に移動し、翌朝そのまま観光地へ入る」。
これは夜行列車だからこそ作れる旅程です。

高松で終われば、
琴平へ行くためには乗り換えなければならない。
しかしサンライズ瀬戸がそのまま琴平まで走れば、寝台から降りた場所が目的地になる。

夜の東京と、朝のこんぴら。
この二つを一本の列車で結ぶ。
琴平延長の価値は、単純に高松から数十キロ先まで走ることではありません。

「夜行列車だからできる旅」を完成させていることにあります。

さらに面白いのが、運賃・料金の扱いです。
実際の列車は宇多津方面から高松へ向かい、再び宇多津方面へ戻ってきます。
つまり実際の走行距離だけを見れば、高松への往復分が加わります。
しかし東京方面から多度津以遠へ利用する場合、この宇多津―高松間の往復をそのまま運賃・料金に加えるわけではありません。

列車運行上の「高松への寄り道」を、旅客にそのまま負担させないための扱いが用意されています。

そしてもう一つ。
高松―琴平間だけを「サンライズに乗ってみたい」という理由で利用することもできません。

「延長区間だけの乗車は不可」

あくまで東京方面から夜を越えてきたサンライズ瀬戸の旅を、そのまま琴平まで延ばすための運転なのです。
さらに、琴平発東京行きが設定されるわけでもありません。
琴平まで走るのは下り列車だけ。
上りのサンライズ瀬戸は、通常どおり高松から東京へ向かいます。

下りだけ。
特定日だけ。
高松で折り返し。

普段の定期列車では走らない土讃線へ285系が入っていく。
効率だけを考えれば、少し不思議な列車です。
しかし、その「少し不思議な列車」が10年以上続いている。
2014年に始まった期間限定の延長運転は、いつしかサンライズ瀬戸のもう一つの顔になりました。

そして今年もまた、
JR四国の臨時列車の発表に「琴平」の文字が載っています。
琴平へ行くだけなら、高松へ寄る必要はない。
それでも高松へ行く。
そこで本来の「サンライズ瀬戸」としての役目を果たし、向きを変えて、もう一度走り出す。
そして多度津から土讃線へ入り、285系は琴平へ向かう。

一見すると、遠回りです。
けれど、その遠回りをしてでも高松を結び、さらにその先へ旅を伸ばす。

それが「サンライズ瀬戸 琴平延長運転」です。

夜行列車が当たり前だった時代なら、
特別でもなかったのかもしれません。

しかし、定期寝台特急が「サンライズ」だけとなった今。

東京を夜に発った寝台特急が、高松で終わらず、朝の土讃線へ入っていく。

その光景自体が、もう十分に特別です。
今年もまた、限られた朝だけ。
高松駅で向きを変えたサンライズ瀬戸は、いつもの終着駅を背にして走り出します。

行先表示は――「琴平」。

そこには普段のサンライズ瀬戸では見ることのできない、もう一つの旅が続いています。

(マイミー)

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