【デザインの変化】ホームドアの設置で変わりゆく"横帯"の在り方
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<横に引くのが当たり前だったラインカラー。ホームドアの普及が、その常識を変え始めています。>
ステンレス製の車体に、
一本の色帯を通す。
首都圏の通勤電車では、
長らく当たり前に見られてきたデザインです。
山手線ならウグイス色。
中央線ならオレンジ。
京浜東北線ならスカイブルー。
無機質な銀色の車体にラインカラーを配することで、
遠目からでも「何線の電車なのか」を判別できる。
車体を横方向に貫く帯は、
装飾であると同時に、
鉄道車両にとって重要な識別表示でもありました。
ところが近年、
その「横帯」に変化が生じています。
理由のひとつが、
ホームドアの普及です。
従来のラインカラーは、
車体の窓下、いわゆる腰部へ配置されることが一般的でした。
しかしホームドアが設置されると、
まさにその部分が隠れてしまいます。
何線の車両なのかを伝えるための色が、
ホームから見えない。
安全設備の普及によって、
車両側も「どこに色を置くのか」を
考え直す必要が生じたのです。
その代表例が、
2015年に登場した山手線E235系です。
先代のE231系500番台まで続いていた
窓下のウグイス帯は姿を消し、
E235系では乗降扉を中心として
縦方向にラインカラーを配置。
ホームドア越しでも確認できる場所へ
色そのものを移しました。
興味深いことに、
同じE235系でも横須賀・総武快速線用の1000番台では、
青とクリームの伝統的な横帯が採用されています。
ホームドアのない区間を多く走行することから、
こちらでは従来型の横帯が残されたもの。
同じE235系でありながら、
走る路線によって
ラインカラーの考え方まで異なるのです。
東京メトロでも、
同様の変化を見ることができます。
丸ノ内線2000系では、
かつての300形を思わせる
白い「サインウェーブ」を復活させましたが、
その位置は車体上部。
東京メトロ自身も、
ホームドア区間でも見やすくするため
上部へ配置したと説明しています。
さらに北綾瀬支線で使用された千代田線05系では、
従来の腰部の帯に加え、
わざわざ窓上にもラインカラーを追加。
ホームドアによって帯が見えなくなることを前提に、
「もう一本、上に色を置く」という対応が採られました。
そして、
この変化が現在も続いていることを示すのが、
東京臨海高速鉄道りんかい線の新型71-000形です。
2025年10月に営業運転を開始した同形式では、
エメラルドブルーのグラデーションを
車体腰部だけでなく、
窓まわりを含む上部まで大きく展開。
東京臨海高速鉄道は、
その理由について
「ホームドアの高さを考慮」したものと明記しています。
さらに号車表示や車いす、
ベビーカーのピクトグラムについても、
ホームドア越しに見やすい車体上部へ配置。
もはやホームドアは、
完成した車両を後から隠してしまう設備ではありません。
新型車両を設計する段階から、
「ホームドア越しにどう見えるのか」が
外観デザインの条件に組み込まれているのです。
横へ引く。
上へ移す。
扉へ縦に配置する。
あるいは車体上部まで大胆に色を広げる。
ラインカラーそのものが
消えようとしているわけではありません。
むしろ、
列車を識別するという本来の役割を果たすために、
その位置と形が変化しているのです。
長らく鉄道車両の定番だった「横帯」。
ホームドアの普及は、
駅の風景だけではなく、
一本の帯を横へ通すという
鉄道車両のデザインそのものまで変え始めています。
(Mr.DIMER編集長)

