【惜別。500系新幹線電車 Vol.3】円筒形車体の光と影
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<史上空前のスペックと、その代償>
第3回は、
500系という車両の“中身”の話。
500系が到達した性能と、
その裏側にあった代償。
その両方を見て参りましょう。
■地上最強の16両
500系のスペックは、
今日(こんにち)振り返っても圧巻です。
0系以来となる、
16両全車電動車。
64基のモーターが叩き出す編成出力は、
W1編成で実に18,240kW。
W2編成以降でも17,600kWを誇り、
300系の約1.5倍という、
当時の高速鉄道車両として破格の出力を備えていました。
平坦線での均衡速度は365km/h。
発車からわずか4分程度で
300km/hに到達する加速力は、
曲線の多い山陽新幹線において、
“減速しても、すぐ取り返せる”
という大きな武器となりました。
■ハニカム構造という贅沢
車体も特別です。
側構体と床構体には、
厚さ30mmのアルミハニカムパネルを採用。
六角形のハニカムコアを
2枚のアルミ合金で挟み、
ろう付けして組み上げる構造です。
高剛性と軽量化、防音性を同時に実現し、
車体構体だけで、
1両あたり300系比0.6tの軽量化に成功。
床下機器はユニット化され、
車体形状に合わせたカバーで覆う
「新ボディマウント構造」を採用しました。
さらに、
ドアは閉じると車体と面一になる
プラグドアとし、
車体表面を徹底的に平滑化。
まさに、贅を尽くした造りです。
しかし、
この贅沢さこそが、
500系にとって“影”にもなります。
■1編成46億円
ハニカムパネルは、
製造に用いる炉の大きさに制約があり、
大型パネルを製作することができませんでした。
結果として製造工程は複雑化し、
車体の製造コストは大幅に上昇。
製作費は1両あたり約3億円、
16両編成で約46億円。
300系より、
1編成あたり約6億円も高価でした。
こうした高コストに加え、
後継となる700系の開発へ軸足が移ったことで、
製造されたのは、
わずか9編成144両。
東京~博多間を直通する「のぞみ」の
すべてを500系で賄うには、
到底足りない数でした。
なお、
この高コストなハニカム構造は
後継の700系には受け継がれず、
量産車としては500系のみのものとなっています。
■「1,323席」の呪縛
そして、
もうひとつの影が“定員”でした。
15mにも及ぶロングノーズの代償として、
先頭車の定員は300系より12名減少。
これに対し、
設計段階でJR東海から、
「300系の定員1,323席を下回らないこと」
が強く求められました。
大量輸送を分刻みで捌く東海道新幹線では、
車種が変わっても定員や乗降扉位置を揃え、
ダイヤ乱れ時にも柔軟に車両を差し替えられることが
運用上の大きな強みとなります。
そこで500系は、
先頭車の運転席寄りにあった客用扉を廃止。
普通車のシートピッチを
1,040mmから1,020mmへ詰め、
洗面所を減らすなどして、
中間車の定員を増やしました。
その結果、
涙ぐましい設計上の工夫の末に確保した定員は、
1,324席。
300系を、
わずか“1席”上回りました。
しかし、
編成全体の定員こそ揃えられても、
号車ごとの定員とドア位置までは
300系と統一できませんでした。
この“500系だけが異なる”という特殊性が、
のちに東海道新幹線における500系の運命へ、
静かに影を落としていくことになります。
次回、Vol.4は、
いよいよ栄光の日。
1997年3月22日。
のぞみ503号、新大阪発車。
世界最速300km/hの衝撃を、
当時のダイヤとともに振り返ります。
どうぞお楽しみに。
(Mr.DIMER編集長)
