【特急列車の未来】“万能特急”はもう生まれない?これからを担う新時代の特急型とは。
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かつて日本には、“どこへでも行ける特急型”がいました。
その代表格が485系。
直流1500V、交流50Hz・60Hzに対応し、東北、北陸、関西、九州まで、日本列島を縦横無尽に駆け回った国鉄特急の万能選手です。
昼行特急から夜行列車までこなし、転属を繰り返しながら全国各地で活躍。
まさに、
「とりあえず485系を持ってくれば何とかなる。」
そんな存在でした。
ではこれから先、485系のような“万能特急”は再び生まれるのでしょうか。
私の独断と偏見で言えば、おそらく答えは「NO」。
しかし、それは特急型が退化したという意味ではありません。
むしろ時代は、
“何でもできる車両”から、その路線で「最強」の車両へ。
大きく変わり始めています。
「通勤型とは、むしろ逆方向へ」
ここが面白いところです。
現在の通勤型電車は、設計や機器を共通化し、標準化する方向へ進んでいます。
部品を共通化して保守をしやすくする。
製造コストを抑える。
複数の線区で使いやすくする。
大量に必要な通勤型だからこそ、
「なるべく同じものを効率よく使う」
そんな思想が強くなっています。
ところが、特急型はむしろ逆。
通勤型が“標準化”へ向かう一方で、
特急型は“専用化”へ向かっているとは思いませんか?
「273系・伯備線を極めた新世代振り子車両」
その代表格が、
2024年に営業運転を開始した273系「やくも」。
長年伯備線を走った381系の後継として誕生しました。
最大の特徴は、「車上型制御付き自然振り子方式」。
車両側で走行位置を把握し、カーブへ入るタイミングに合わせて振り子動作を制御。
速達性を維持しながら、乗り心地の改善を狙っています。
全席コンセントや大型荷物スペースなど、設備面も現代仕様。
しかし重要なのは、
273系が「全国どこでも走るための車両」ではないこと。
伯備線という曲線の多い山岳路線。
そして「やくも」という列車。
そこへ徹底的に合わせて造られています。
「385系・(しなの)のために進化する次世代特急」
さらに、この流れを強く感じさせるのが385系。
383系「しなの」の後継を見据え、JR東海が開発を進める次世代特急型電車です。
名古屋から長野へ向かう中央西線は、とにかくカーブが多い。
そこで385系では、新しい振子制御技術を採用。
383系が築いた曲線通過性能を受け継ぎながら、さらに乗り心地を向上させることが狙われています。
つまり385系に求められているのも、
「全国で使えること」ではありません。
“中央西線で、いかに速く、快適に走るか。”
そこへ能力を振り切った車両です。
「HC85系・気動車という常識まで変えた特急型」
そしてもう一両。
新時代を象徴する存在として外せないのがHC85系です。
キハ85系の後継として登場しましたが、形式名には「キハ」の文字がありません。
HC85系は、
従来のディーゼルカーとは仕組みが大きく異なります。
エンジンで発電した電気と蓄電池の電力を使い、モーターで車輪を回すハイブリッド方式。
非電化区間を走る特急だからといって、昔ながらの液体式気動車でなければならない。
そんな常識も、過去のものになりつつあります。
現在は「ひだ」「南紀」で活躍。
環境性能だけでなく、静粛性、加速性能、快適性まで含め、
“非電化特急とはどうあるべきか。”
その答えを一から作り直した車両とも言えるでしょう。
「同じものを使う通勤型」と「違うものを造る特急型」
こうして見ると、
現代の鉄道車両は面白い方向へ進んでいます。
通勤型は、
標準化。
共通化。
大量生産。
保守の効率化。
一方の特急型は、
線区専用。
列車専用。
乗り心地重視。
その路線ならではの性能。
同じ鉄道車両でありながら、
両者は逆方向へ進んでいるのです。
もちろん、特急型にも部品共通化やコスト削減は必要です。
それでも最後に残るのは、
“この路線だから、この性能が必要。”
という考え方です。
「もう“万能特急”はいらない?」
485系は、国鉄という巨大な一つの組織だからこそ生まれた車両でした。
交流も直流も走る。
寒冷地にも行く。
長編成にもなる。
転属しても使える。
一形式で、できるだけ多くの仕事をこなす。
それが485系の強さでした。
しかし現在は違います。
273系は伯備線を極める。
385系は中央西線を極める。
HC85系は非電化幹線に新しい答えを出す。
“何でも70点でこなす車両”ではなく、
“必要な場所で100点を取る車両”。
これこそが、これからの特急型なのかもしれません。
通勤型が“みんな同じ”へ向かう一方で、
特急型は“ここにしかない”へ向かっていく。
485系のような万能特急は、もう生まれない。
でもその代わり、
「その路線だから、この車両。」
そんな特急が、日本各地に生まれていく。
私は、それこそが新時代の特急列車の姿だと思います。
そして新時代の鉄道車両の楽しみ方なのかもしれません。
(マイミー)

