【鉄道界の寝ない王】乗客は寝ても、581・583系は寝なかった
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<昼は特急、夜は寝台特急。休む間もなく酷使された国鉄の名車>
人間が睡眠をとって英気を養うように、
鉄道車両にも、
当然、「お休み」の時間があります。
いえ、
ただ出番がないからお休みしているだけです。
(整備などを除く)
雑談はさておき、
朝から晩まで走ったあと、
夜は車両基地へ。
点検や整備を受け、
翌朝の出番を待つ。
およそ一般的な鉄道車両の仕業は上述の通り。
ところが国鉄時代、
そんな常識を覆すような車両が存在していました。
ご存じ、
581・583系交直両用特急形寝台電車です。
いわば、
鉄道界の「寝ない王」。
横文字を用いるなら、
「ショートスリーパー」とも申せましょう。
昼も夜も働くことを前提として造られた車両です。
■昼は座席、夜は寝台
581系が登場したのは1967年。
最大の特徴は、
昼間は座席特急、
夜間は寝台特急として使用できること。
昼間は、
頭上へ寝台を収納。
向かい合わせの座席を備えた
特急電車として走ります。
そして夜になれば、
座席を寝台へ転換。
三段式の寝台を組み立て、
今度は寝台特急として走り出す。
乗客は寝る。
しかし、
581系は寝ません。
■昼行、夜行を兼用した実用車
登場時の581系は、
新大阪-博多間の寝台特急「月光」と、
新大阪-大分間の昼行特急「みどり」に投入。
博多から「月光」として夜通し走り、
翌朝、新大阪へ到着。
寝台を座席へ戻すと、
今度は「みどり」として大分へ向かう。
実際に、
昼夜を跨いだ運用が組まれていました。
■なぜ、そこまで働かせる?
当該系列の誕生背景には、
高度経済成長期の急激な輸送需要増加があります。
昼行列車には昼行用の車両。
寝台列車には寝台用の車両。
これでは必要な車両数が増えるだけでなく、
昼間、寝台車を留置しておく場所(車庫)が必要になってくる、
そうならば、
「同じ車両を、昼も夜も使えばいい」。
当時の国鉄として導き出した、
合理化の回答でした。
昼夜兼用とすることで、
車両基地の逼迫を緩和すると同時に、
車両そのものの稼働率も高めることができたのです。
翌1968年には、
交流50Hz・60Hz双方へ対応した583系も登場。
その活躍範囲は東北方面にも広がり、
昼は「はつかり」。
夜は「はくつる」「ゆうづる」。
581・583系は文字通り、
日本列島を昼夜走り続ける存在となりました。
「寝台電車」という名前だけを見ると、
夜に活躍する車両のようにも思えます。
しかし、
581・583系が目指したものは、
むしろその逆でした。
夜しか使えなかった寝台車を、
昼にも働かせる。
昼行用と夜行用、
二つの役割を一つの車体へ押し込む。
人が眠る時間すら、
運用時間に変えてしまった電車。
581・583系。
「鉄道界の寝ない王」。
これほど、この称号が似合う車両は
後にも先にも
例を見ません。
(Mr.DIMER編集長)

