【“エイリアン顔”】六兄弟<後編>

【“エイリアン顔”】六兄弟<後編>

マイミー

■成田空港へ降り立ったE259系
2009年。

成田エクスプレスの2代目車両として、E259系が登場します。
初代253系から受け継いだ、赤・白・黒の強烈な配色。
大きく黒く覆われた運転台窓。
そして、頬のような位置に埋め込まれた前照灯。

都市部を走る洗練された特急でありながら、その正面には、どこか感情の読めない不思議な表情があります。
2023年からは、シルバーを取り入れた新デザインへ変更。
赤を強調した顔から銀色の顔へ変わったことで、エイリアン感はさらに増したようにも見えます。

まさに、“アーバン・エイリアン”。

都会のホームへ音もなく滑り込むその姿には、独特の怖さと美しさが共存しています。

■異形のDNAをより昇華させたE657系
そして2012年。
E657系が、常磐線へ投入されます。
E259系の基本構造や新技術を取り入れながら、常磐線特急に必要な交直流性能を与えられた車両です。
白梅をイメージした、赤みのある白い車体。
黒く切り取られた高運転台。

その下には、左右へ大きく離して配置された前照灯。
正面から見れば、巨大な黒い頭部から、細い目でこちらを見下ろしているようにも見えます。

しかし、E657系の顔は単なる奇抜なデザインではありません。

踏切事故などから乗務員を守る高運転台。
衝突時の安全性を考慮した前頭構造。
視認性や整備性まで考えられた灯具類。
異形に見えるその顔は、安全性と機能性を追求した結果でもあるのです。

■中央本線へ帰還した最新型、E353系
そして2017年。

異形のDNAは、再びその始まりの地ともいえる中央本線へ帰ってきます。
E351系の後継車両として登場したE353系です。
大きく黒く覆われた運転台窓。
鋭く吊り上がった前照灯。
前方へ突き出した、立体的で力強いフロントマスク。

E351系のような丸みを帯びた“生物感”は薄れ、代わりに直線と鋭角を組み合わせた、機械的な顔へと進化しました。
例えるなら、E351系が未知の惑星から飛来した生命体なら、E353系はその技術を解析して造られた最新鋭の戦闘型エイリアン。

白を基調とした車体に、あずさバイオレットの帯。
シンプルでありながら、正面から迫ってくる姿には明らかな威圧感があります。
E351系で採用された制御付き自然振り子方式に代わり、E353系では空気ばね式車体傾斜装置を採用。
異形の姿だけでなく、中央本線の曲線を高速で駆け抜けるという使命も、しっかりと受け継いでいます。

E351系からE353系へ。
顔つきは大きく変わりました。
しかし、高い位置にある黒い運転台窓と、低い位置から睨みつけるような前照灯は健在。
E353系は、途絶えたはずの“中央本線エイリアン”の血統を、約20年の時を越えて受け継いだ存在なのです。

■似ている。しかし同じ血統ではない
この6形式は、すべてが同じ設計を直接受け継いだ兄弟車ではありません。
デザインを担当した企業も、車体構造も、使用目的も異なります。

それでも高い位置にある、黒い運転台窓。
滑らかに張り出した前頭部。
低い位置から、こちらを睨むように光る前照灯。
この3つが組み合わさることで、JR東日本独特の“エイリアン顔”が生まれたように思えてなりません。

それは、単なる時代の流行だったのか。
それとも、安全性と速度を追求した先に自然と生まれた形だったのか。

答えは分かりません。

ただ一つ言えるのは、国鉄形特急の面影を断ち切り、
JR東日本が自らの時代を切り拓こうとした象徴の一つが、
この異形のフロントマスクだったということではないでしょうか。

255系が最初に地球へ降り立った1993年から、すでに30年以上。

E351系は姿を消し、255系も臨時運用はあるものの定期運用を退きました。

それでも、E655系、E259系、E657系、E353系は今なお、
それぞれの使命を背負って走り続けています。

美しいのか。

怖いのか。

それとも、格好いいのか。

見る人によって、その表情は変わる。
しかし、一度見たら決して忘れられない。

もちろん、こんな呼び方をしているのは私だけかもしれません。
それでも、この6形式を並べてしまったら、もうそうとしか見えない。

255系、E351系、E655系、E259系、E657系、E353系。

JR東日本が生み出した、異形の特急車両たち。

私は彼らを、勝手にこう呼びたい。

“エイリアン顔”六兄弟と。

(マイミー)

【“エイリアン顔”】六兄弟<後編>

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