【あれ?N’EXじゃないの?】E259系――“空港特急の顔”が銚子へ走り始めたワケ

【あれ?N’EXじゃないの?】E259系――“空港特急の顔”が銚子へ走り始めたワケ

マイミー

E259系といえば、やっぱり「成田エクスプレス」。
白い車体に赤と黒。あの独特の顔を見れば、行先表示を見なくても「あ、N’EXだ」と分かる。

それくらい、車両と列車名が一体になった存在でした。
登場は2009年10月。

1991年の成田エクスプレス運転開始から使われてきた253系を置き換えるために誕生し、6両編成22本、計132両が製造されました。

最初から狙いは明確です。
「空港アクセス特急」。

大型荷物を持った利用客を前提に、荷物置場にはダイヤルロック式の錠を装備。出入口や荷物置場には防犯カメラ、車内には4か国語対応の大型液晶案内装置。座席には大型テーブルとコンセントまで備えました。

つまり、普通の特急車をN’EXにしたのではない。
N’EXになるために生まれた特急車だったわけです。
しかもE259系の場合、この「専用車感」がとにかく強かった。

253系にももちろんN’EXのイメージはありましたが、E259系は車体そのものに大きく「N’EX」を掲げ、空港アクセスのブランドイメージを真正面から背負っていました。
だからこそ、今の姿に少し違和感を覚える人もいるでしょう。

「あれ?N’EXじゃないの?」

実はE259系、
まったく空港以外へ出なかったわけではありません。

2012年12月からは「マリンエクスプレス踊り子」として東京―伊豆急下田間にも進出。
N’EXの車両が海沿いを走って伊豆へ向かう姿は、当時からなかなかの異色でした。

ただし、これは臨時列車。

E259系の本職が「成田エクスプレス」であることに変わりはありませんでした。
その空気が大きく変わったのが2023年です。
JR東日本はE259系の車両デザインをリニューアル。
白・赤・黒という基本イメージは残しながら、前面と側面にシルバーを取り入れ、「SERIES E259」という新たなロゴを掲げました。

ここで注目したいのは、単なるイメージチェンジではなかったこと。

JR東日本はその理由について、通勤やレジャーなど利用目的が多様化していると説明し、E259系を「空港アクセス特急に限らない多様化したご利用目的に合わせた都市間輸送特急」と位置付けました。

これ、かなり大きな一言です。
要するに、「E259系=N’EX専用」
という約14年間続いた前提を、自ら外したわけです。

そして翌2024年3月16日のダイヤ改正。
E259系はついに定期特急「しおさい」へ投入され、東京―銚子間を走り始めます。

成田空港へ向かうために生まれた車両が、総武本線をそのまま東へ進み、終点・銚子まで行く。
同じ千葉方面ではあるけれど、役割はまるで違います。

しかもこの改正は、
房総特急そのものの世代交代でもありました。

それまで「しおさい」を担っていた255系9両とE257系10両に対し、改正後はE259系6両とE257系5両へ再編。
単にN’EXの“余った車両を持ってきた”という話ではなく、房総特急の輸送体系を組み替える中でE259系が正式に選ばれた、という方が実態に近いでしょう。

では、なぜE259系だったのか。
これは意外と理にかなっています。
E259系は6両固定編成。

最高速度130km/hの性能を持ち、グリーン車もあり、車内設備も特急車として十分。
空港輸送だけに縛らなければ、その能力をほかの都市間輸送にも使える。

新車を一から用意しなくても、
すでに完成度の高い特急車がそこにいるわけです。
むしろ今までN’EXだけで使っていた方が、少し贅沢だったとも言えるかもしれません。

そして面白いのは、JR東日本の現在の公式案内。
そこにはもう、
「成田エクスプレス/しおさい(E259系)」
と並んでいます。

かつては「E259系」と聞くより先に「N’EX」が浮かぶほどだった車両です。

それが今では、成田空港へも行くし、銚子へも行く。
考えてみれば、国鉄時代の特急形電車では珍しくなかった使い方です。
485系などは、車両形式と列車名が一対一ではありませんでした。

しかし分割民営化後は、列車や用途に合わせた専用色の強い特急車も増えていきました。
E259系も、その象徴のような車両だったと思います。
ところが15年ほど走ったところで、今度は「専用」から「汎用」へ。

新形式を作ったのではなく、既存の専用車から看板を少し外して、使える場所へ使う。
なんだか一周回って、昔の特急車の使い方に少し戻ったようにも見えます。

もちろん今でも、E259系の主役が成田エクスプレスであることに変わりはありません。
あの顔がホームへ滑り込んでくれば、今でも最初に思い浮かぶのはN’EXです。

でも、そのまま銚子まで走って行くこともある。
「あれ?N’EXじゃないの?」
そう思わせる時点で、E259系の第二章はもう始まっているのかもしれません。

(マイミー)

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