【鉄道界の】写ルンです

【鉄道界の】写ルンです

編集長

今月(2026年7月)、
発売40年を迎えた、
富士フイルムのレンズ付きフィルム「写ルンです」。

初代の発売は、1986年7月1日。
「いつでも、どこでも、誰でも、簡単に」をコンセプトに、
"フィルムにレンズを付ける"という
逆転の発想から生まれ、累計販売数は17億本以上。

まさに一世を風靡したヒット商品です。

デジタルカメラの台頭で
一時は存在感が薄れたものの、
近年はあのアナログな撮影体験が
Z世代を中心に再評価され、
この8月以降には、実に20年ぶりの新商品として、
防水モデルと黒白フィルムモデルが発売されるとのこと。

さて、鉄道界にあっては。

この使い捨てカメラになぞらえ、

"価格半分、重量半分、寿命半分"

というコンセプトで登場した209系電車を、
「走ルンです」と揶揄(親しみを込めて)
したのが始まりでした。

■"寿命半分"の衝撃
209系の登場は1993年。
京浜東北線の103系置き換えを目的に、
前年の試作車901系を経てデビューしています。

軽量ステンレス車体にVVVFインバータ制御。
製造コストは従来車の半分、
車体重量もおよそ半分。

そして何より衝撃的だったのが、
設計寿命を約13年と割り切った"寿命半分"の思想です。

"電車(鉄道車両)とは数十年使うもの"
という価値観が基準の当時にあって、

長持ちさせるための過剰な頑丈さを排し、
安く、軽く造り、
時代に合わなくなれば潔く更新する。

という設計思想は、まさに革命でした。

薄い車体に、簡素な内装。
当時、「安っぽい」と辛辣な評価が
少なくなかったことも、
正直に記しておくところです。

■ところが、永く"走ルン"です。
デビューから33年が経過した2026年現在、
209系は、いまだ走っています。

京浜東北線を退いた後、
2009年からは房総地区へ転用。
機器更新を受けながら、
内房線・外房線・総武本線などで
活躍を続けています。

2021年には伊豆急行へ譲渡された車両が
「3000系」として運用を開始。

"寿命半分"を標榜した車両が、
半世紀選手であった先輩たちに迫る車齢を
重ねつつあります。

■"使い捨て"は誤解だった
ここで面白いのが、
本家・写ルンですとの共通点。

写ルンですは"使い捨てカメラ"と
呼ばれ続けましたが、
実際には使用済み本体を回収し、
部品を再利用する、
リサイクルシステムの先駆けでした。

一方の209系も、
"使い捨て電車"と揶揄されながら、
その実態は、
リサイクルを前提として設計し、
車体・機器を無駄なく使い切る思想の持ち主。

両者とも、"使い捨て"という呼び名とは裏腹に、
「モノを賢く使い切る」ことへ
真摯に向き合った先駆者であったと申せましょう。

名で誤解され、実で見直される。
似た者同士の40年、33年です。

■「走ルンです」が遺したもの
209系の設計思想は、
E231系、E233系、E235系へと受け継がれ、
今日のJR東日本一般形車両すべての礎となりました。

言うなれば、
現在の首都圏を走る電車たちは、
みな「走ルンです」の系譜に連なる子孫たち。

40年を迎えてなお愛される写ルンですと、
33年を経てなお走り続ける走ルンです。

"半分"のはずだった寿命を
とうに使い果たしてなお現役の姿を見るに、
あの揶揄はもはや、
賛辞へと転じたのではないか。

と、思うところです。

(Mr.DIMER編集長)

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