【国鉄型魔改造列車特集Vol.3】165系・パノラマエクスプレスアルプス

【国鉄型魔改造列車特集Vol.3】165系・パノラマエクスプレスアルプス

マイミー

<急行形165系を切り刻み、“前面展望電車”へ。国鉄末期に生まれ、最後は富士山の麓まで走り抜いた魔改造車>

国鉄分割民営化を目前に控えた1987年3月。
東京西鉄道管理局から、
とんでもない165系が姿を現します。

その名は、「パノラマエクスプレスアルプス」

中央本線や大糸線を走るなら、
雄大な山岳風景そのものを列車の魅力にしてしまおう。
そんな発想から生まれた、
国鉄最後期を代表するジョイフルトレインです。

種車は、急行形電車165系。
しかし完成した姿を見れば、
「165系はどこへ行った?」
と言いたくなるほどの大改造でした。

最大の特徴は、両端のクロ165形。

クハ165形の前頭部を大胆に作り替え、
運転台を客室より後方の高い位置へ移設。
その前に展望室を設けるという、
小田急ロマンスカーや名鉄パノラマカーを思わせる構造となりました。

これは国鉄の電車として初めて本格的な前面展望構造を採用した車両でした。

編成は、
クロ165+モロ164+クモロ165
+クモロ165+モロ164+クロ165
の6両。

3両単位でも使用できる構成で、6両編成時には両端に展望車が来るよう組まれていました。
そして車内も、もはや急行形165系ではありません。
展望室、ラウンジ、大型窓、リクライニングシート。

さらにモロ164形のパンタグラフ下には「6人用個室」まで用意されました。

形式記号も「ハ」ではなく「ロ」。

つまり全車グリーン車。

外観も湘南色とは似ても似つかない、白を基調に赤と青を配した大胆なデザインとなりました。
それでも床下では、
MT54形主電動機を搭載する165系の足回りが生きています。

豪華な展望車の姿でありながら、走れば聞こえてくるのは国鉄急行形の音。
まさに“魔改造”です。

しかも改造されたのは、まだ国鉄が存在していた最後の時期。
新車を一から造るのではなく、
長年酷使されてきた急行形電車を徹底的に造り替え、
新しい観光需要へ対応させる。

そこには、限られた予算と車両を最大限に活用しようとした、
国鉄末期ならではの発想が色濃く表れていました。
そんなパノラマエクスプレスアルプスには、珍しい逸話も残されています。

1987年8月25日。
テレビ番組の収録で、なんと”山手線を一周”しました。

ところが当時の山手線はATC区間。
パノラマエクスプレスアルプス自身は対応していません。
そこで先頭にATC対応のクモヤ143形を連結して走行。

つまりせっかくの展望室なのに、
”真正面にはクモヤ143”。

「パノラマなのに前が見えない」という、なんとも国鉄末期らしい豪快な運転となりました。

民営化後はJR東日本へ継承。
中央本線を中心に団体・臨時列車として活躍し、1990年代には同系統の塗装を施した167系4両を挟み、臨時急行「しんせん・やまなし」で10両編成を組んだことさえありました。

そして2001年、JR東日本での運用を終了。
しかし、この165系の物語はここでは終わりません。

6両すべてが富士急行へ譲渡され、
3両編成2本の2000系へ。

2002年2月から、
「フジサン特急」として第二の人生を始めます。
パノラマエクスプレス時代の展望室やラウンジ、個室を活かし、富士山を眺めながら走る観光特急へ転身。
車体には富士山をキャラクター化した大量の「フジサン君」が描かれました。

国鉄時代の上品な欧風デザインから一転、かなりポップな姿。
ところが中身は、紛れもなく165系です。
しかもこの2000系は、やがて
「営業運転を続ける最後の国鉄165系一族」
となりました。

そして2013年には、引退を控えた2002号編成が、
なんと往年のパノラマエクスプレスアルプス時代を思わせる塗装へ復刻。
富士山の麓に、かつて中央本線を駆けた白・赤・青の姿が帰ってきました。

「フジサン特急」として生まれ変わった車両が、
最後にもう一度“パノラマエクスプレスアルプス”へ戻る。
長年この車両を追い続けたファンにとっては、
まさに粋な餞別でした。
老朽化のため順次引退が進み、最後まで残った2001号編成も、”2016年2月7日”にラストラン。
直前には車両故障で約3週間運休するという出来事もありました。
満身創痍の中、懸命な復旧作業によって再び営業運転へ復帰。
そして予定通り雪の降る中多くのファンに見守られながら、
最後の日を迎えています。

1960年代に急行形電車として生まれ、
国鉄末期に展望ジョイフルトレインへ魔改造され、
最後は富士山の麓を走る観光特急へ。

約半世紀にわたり、姿も役目も変えながら走り続けた165系。

景色を見せるためなら、
運転台の前に客席を造ってしまえばいい。

そんな大胆な発想を、本当に形にした。

それが、

”165系・パノラマエクスプレスアルプス”

国鉄最後期だからこそ生まれた、
あまりにも豪快で、美しい“魔改造列車”でした。

(マイミー)

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