【鉄道車両ステンレス史】コルゲート時代(前編)

【鉄道車両ステンレス史】コルゲート時代(前編)

編集長

<あの“デコボコ”には、理由がある>

銀色の車体に、
幾筋もの凹凸。

一昔前のステンレス車と聞いて、
この姿を思い浮かべる方は
多いのではないでしょうか。

この凹凸の名は、
「コルゲート」。

近年にあっては
どこか"古いステンレス車の代名詞"に見える意匠ですが、
これらは単なる飾りではありません。

日本におけるステンレス電車の歴史は、
1958年に登場した東急5200系から始まります。

もっとも5200系は、
車体の骨組までステンレスだったわけではなく

普通鋼製の骨組に
ステンレス製の外板を組み合わせた、
いわゆる「セミステンレス車」。

それでも、
塗装を必要としないステンレス外板の採用は、
車両の保守を軽減するうえで
大きな一歩となりました。

そして1962年。

東急車輛製造が
米国BUDD社から導入した技術をもとに、
日本初のオールステンレス車、
東急7000系が登場します。

それら車両を象徴したのが、
側面に刻まれたコルゲートでした。

では、
なぜ平らな板のまま、
ではいけなかったのでしょうか。

理由のひとつが、
ステンレスならではの「薄さ」です。

普通鋼は、
長年の使用による腐食を見越し、
その分の板厚――
いわゆる「腐食代」を
持たせる必要があります。

一方、
耐食性に優れるステンレスでは、
この腐食代を大幅に減らすことができる。

そのぶん薄い板を使え、
軽量化につなげられるわけです。

ところが、
板を薄くすれば、
今度は平面を保ちにくくなります。

そこで外板を波形に成形し、
薄板のまま剛性を高めた。

これが、
コルゲートの大きな役割でした。

もうひとつ、
ステンレス車体には難題がありました。

「溶接による歪み」です。

ステンレス鋼は普通鋼より熱を伝えにくく、
溶接時の熱が集中しやすい材料。

そのため鉄道車両では、
入熱を抑えられる抵抗スポット溶接が
多く用いられました。

それでも、
無数の箇所を接合していけば、
外板の歪みを完全になくすことはできません。

ここでも、
外板そのものの剛性を高める
コルゲートが功を奏することとなります。

つまり、
初期のステンレス車に刻まれた
あの独特な“デコボコ”は、

薄く、軽く、
そして歪みの少ない車体を成立させるための
極めて機能的な造形だったのです。

しかし――

ステンレス車体の技術が進歩すると、
この細かなコルゲートにも
変化の時が訪れます。

次回は、
凹凸の数を大きく減らした
「ビード」の時代へ。

ステンレス車体は、
ここからさらなる軽量化へと進んでいきます。

(Mr.DIMER編集長)

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