【鉄道車両ステンレス史】ビード時代(中編)

【鉄道車両ステンレス史】ビード時代(中編)

編集長

<少なくなった“デコボコ”>

前編でご紹介した、
ステンレス車体を象徴する「コルゲート」。

薄い外板に剛性を持たせ、
溶接による歪みを抑えるための
極めて機能的な造形でした。

しかし1970年代も後半になると、
ステンレス車体は
次なる世代へと進み始めます。

目指したのは、
さらなる「軽量化」。

その過程で、
車体表面にも大きな変化が現れました。

細かな波状のコルゲートに代わり、
よりシンプルな筋状の凹凸――

「ビード」が登場したのです。

転機となったのは1978年。

東急8400系が、
軽量ステンレス車体の量産先行車として登場。

その成果をもとに、
1980年には東急8090系が
初の量産軽量ステンレス車として登場しました。

ここで行われたのは、
単純に外板を薄くするだけの
軽量化ではありません。

コンピューターによる解析を用い、
車体のどこに、
どれほどの強度が必要なのかを検討。

必要な場所に適当な強度を持たせながら、
不要な部分の材料を削っていく。

さらに、
低炭素ステンレス鋼「SUS301L」も開発され、
従来のステンレス車が抱えていた
腐食割れの問題にも対策が施されました。

その結果、
8090系は従来の8000系と比較して、
1両あたり約2.8トンもの軽量化を達成しています。

そして、
その新しい車体構造を
外から見て分かる特徴が
「ビード外板」でした。

従来のコルゲートは、
外板の広い範囲を波形に成形していました。

対してビードでは、
必要な部分だけを筋状に成形。

外板を加工する範囲を減らし、
平らな面を大きく確保することが
可能となりました。

これには、
副産物もありました。

平らな面が増えることにより、
車体側面に
カラーフィルムを貼りやすくなったのです。

8090系では、
銀一色に近かった従来のステンレス車とは異なり、
車体側面に赤いラインカラーを採用。

「銀色+帯」という、
後のステンレス通勤車では当たり前となる姿が
定着していくこととなります。

そして、
この軽量ステンレス車体の技術は
東急だけのものでは終わりませんでした。

国鉄も1982年から
次世代通勤車両への採用を検討。

東急車輛製造は、
自社が培った軽量ステンレス車体の技術を
国鉄や他の車両メーカーへ公開します。

その成果のひとつとして、
1985年には国鉄205系が登場。

以後、
211系、415系1500番台をはじめ、
電車のみならず気動車にまで
軽量ステンレス車体は広がっていきました。

こうして1980年代、
鉄道車両のステンレス車体は、

「コルゲート」から
「ビード」へ。

軽くなっただけではありません。

あれほど目立っていた“デコボコ”そのものが、
技術の進歩とともに
少しずつ姿を変えていったのです。

しかし――

ビードもまた、
ステンレス車体の完成形ではありませんでした。

やがて銀色の車体から、
その筋すら消えていきます。

次回は最終回。

【鉄道車両ステンレス史】
平滑になった現代。

ステンレス車体は、
ついに“ツルツル”の時代へと入ります。

(Mr.DIMER編集長)

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