【10時打ちが消えていく日】MARSが生んだ一秒の職人技
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「10時打ち」
かつて、みどりの窓口では当たり前のように聞かれたこの言葉。
数々の人気列車の指定席を求め、
多くの人が発売日の朝、駅へ向かいました。
その期待を背負っていたのが、駅員たちの「10時打ち」。
時報と同時にMARS端末へ入力し、コンマ数秒を争って指定席を確保する。
その姿は、まさに職人でした。
しかし、その文化は今、大きな転換点を迎えています。
昨今、JR各社ではみどりの窓口の統廃合や、ネット予約サービスの拡充が進み、「10時打ち」に対応する窓口そのものが減少しています。
一部では、発売開始時刻の手動操作を受け付けない運用や、駅ごとの対応見直しも進み、「10時打ち」を前提とした指定席購入は、以前より難しくなりました。
時代は、確実に変わり始めていますね。
この文化が生まれた背景を少しフォーカスしてみます。
1960年。
国鉄は世界初の本格的なコンピュータ座席予約システム、
「MARS(Magnetic-electronic Automatic Reservation System)」
を実用化しました。
それまで電話や台帳で管理していた指定席を、コンピュータが一括して管理する。
これは当時、世界でも前例のない挑戦でした。
1964年、東海道新幹線が開業すると、その膨大な指定席販売を支えたのもMARSでした。
日本は新幹線だけではなく、「きっぷを売る技術」でも世界の最先端を走っていたとも言えます。
そして誕生したのが、「午前10時一斉発売」という仕組み。
人気列車では、全国の駅から同時にMARSへアクセスが集中します。
一秒早ければ受付されない。
一秒遅ければ満席。
だから駅員たちは時計を見つめ、時報を聞き、正確無比なタイミングで操作する技術を磨き続けました。
「10時打ちが上手い駅がある。」
「この駅員さんなら取ってくれる。」
そんな言葉が全国で語られたのは、MARSという世界最先端のシステムと、それを使いこなした鉄道人の技術が生み出した文化だったのです。
もちろん、インターネット予約は便利です。
24時間申し込める。
駅へ行く必要もない。
時代の流れとして、それは自然な進化でしょう。
ですが、その便利さの裏側で、一つの鉄道文化が静かに姿を消しつつあります。
みどりの窓口の縮小、省力化。
「10時打ち」は、単なる指定席の取り方ではありませんでした。
旅立つ誰かのために、一秒を極めた駅員たちの技術。
その技術があったからこそ、「取れましたよ。」という一言に、お客様は笑顔になれたのです。
私もその1人でした。
新幹線が世界へ誇る日本の技術なら、
MARSは世界へ誇る日本の知恵。
そして10時打ちは、世界へ誇る日本の職人技でした。
便利になることは、決して悪いことではありません。
でも、その便利さの陰で消えていく技術や文化にも、少しだけ思いを馳せてみませんか。
ぜひ皆さんの思い出教えてください。
(マイミー)

