Mr.DIMER Journal
【JR九州特集・D&S列車編 Vol.7】キハ47形・「かわせみ やませみ」
今回取り上げるのは、キハ47形を改造して誕生した「かわせみ やませみ」。 青い「かわせみ」と、緑の「やませみ」。 JR九州のD&S列車の中でも、2両それぞれに異なる名前と色を与えられた、少し珍しい列車です。 種車はキハ47 8087とキハ47 9051。 キハ47 8087が1号車「かわせみ」、キハ47 9051が2号車「やませみ」となっています。 そもそもキハ47形は、国鉄時代の1977年から製造されたキハ40系の一員。 地方線区向けの一般形気動車として全国各地へ投入された車両で、JR九州にも多数が承継されました。この2両もそんなキハ47形の仲間ですが、2017年、その姿を大きく変えることになります。 JR九州11番目のD&S列車として、2017年3月4日に熊本―人吉間で運転を開始したのが「かわせみ やませみ」でした。 列車名の由来は、球磨川流域に生息する「かわせみ」と「やませみ」。 人々が川や山を越えて移動することが容易ではなかった時代にも、球磨川沿いを自由に飛び回っていたであろう二羽の鳥を列車名に選んだとされています。車体もそのイメージに合わせられました。 1号車「かわせみ」は青。 2号車「やませみ」は緑。 球磨川の水と、人吉球磨を囲む山々を思わせる色分けです。 デザインを担当したのは水戸岡鋭治氏。ただ車体の色を変えただけではありません。車内には人吉球磨産のヒノキや杉、さらに八代産のい草など、熊本の素材がふんだんに使われています。 リクライニングシートだけでなく、窓に向いたカウンター席やテーブル席、ソファー席などを配置。 2号車にはビュッフェも設けられ、球磨焼酎や沿線の商品などを楽しめる空間となりました。つまり、この列車のテーマは単なる「観光列車」ではありません。 列車に乗った瞬間から、人吉球磨を感じてもらうこと。 JR九州自身も「列車の中から人吉球磨を感じていただける旅」をテーマとして掲げています。 ここが「かわせみ やませみ」の大きな特徴でしょう。 そして面白いのは、これだけ大きく姿を変えても、ベースはあくまで国鉄生まれのキハ47形ということ。キハ47 8087と9051はいずれもJR九州で機関換装を受けた車両で、300PS級のコマツ製エンジンを搭載する8000・9000番台です。 外観も車内も完全に観光列車へ変わりましたが、走るための基本構造には、国鉄型気動車の面影がしっかり残っています。個人的には、こういうところがJR九州のD&S列車の面白さだと思っています。 新車を造るだけではなく、既存の車両を徹底的に作り込み、まったく別の価値を与える。キハ40系は全国どこにでもいた、ごく普通の気動車でした。...
続きを読む【JR九州特集・D&S列車編 Vol.7】キハ47形・「かわせみ やませみ」
今回取り上げるのは、キハ47形を改造して誕生した「かわせみ やませみ」。 青い「かわせみ」と、緑の「やませみ」。 JR九州のD&S列車の中でも、2両それぞれに異なる名前と色を与えられた、少し珍しい列車です。 種車はキハ47 8087とキハ47 9051。 キハ47 8087が1号車「かわせみ」、キハ47 9051が2号車「やませみ」となっています。 そもそもキハ47形は、国鉄時代の1977年から製造されたキハ40系の一員。 地方線区向けの一般形気動車として全国各地へ投入された車両で、JR九州にも多数が承継されました。この2両もそんなキハ47形の仲間ですが、2017年、その姿を大きく変えることになります。 JR九州11番目のD&S列車として、2017年3月4日に熊本―人吉間で運転を開始したのが「かわせみ やませみ」でした。 列車名の由来は、球磨川流域に生息する「かわせみ」と「やませみ」。 人々が川や山を越えて移動することが容易ではなかった時代にも、球磨川沿いを自由に飛び回っていたであろう二羽の鳥を列車名に選んだとされています。車体もそのイメージに合わせられました。 1号車「かわせみ」は青。 2号車「やませみ」は緑。 球磨川の水と、人吉球磨を囲む山々を思わせる色分けです。 デザインを担当したのは水戸岡鋭治氏。ただ車体の色を変えただけではありません。車内には人吉球磨産のヒノキや杉、さらに八代産のい草など、熊本の素材がふんだんに使われています。 リクライニングシートだけでなく、窓に向いたカウンター席やテーブル席、ソファー席などを配置。 2号車にはビュッフェも設けられ、球磨焼酎や沿線の商品などを楽しめる空間となりました。つまり、この列車のテーマは単なる「観光列車」ではありません。 列車に乗った瞬間から、人吉球磨を感じてもらうこと。 JR九州自身も「列車の中から人吉球磨を感じていただける旅」をテーマとして掲げています。 ここが「かわせみ やませみ」の大きな特徴でしょう。 そして面白いのは、これだけ大きく姿を変えても、ベースはあくまで国鉄生まれのキハ47形ということ。キハ47 8087と9051はいずれもJR九州で機関換装を受けた車両で、300PS級のコマツ製エンジンを搭載する8000・9000番台です。 外観も車内も完全に観光列車へ変わりましたが、走るための基本構造には、国鉄型気動車の面影がしっかり残っています。個人的には、こういうところがJR九州のD&S列車の面白さだと思っています。 新車を造るだけではなく、既存の車両を徹底的に作り込み、まったく別の価値を与える。キハ40系は全国どこにでもいた、ごく普通の気動車でした。...
続きを読む
【JR九州特集・D&S列車編 Vol.6】キハ47形・或る列車。廃車になった国鉄型を“幻の豪華...
一度はJR四国で廃車となった車両をJR九州が譲り受け、豪華な車内を与え、形式まで、 「キロシ47」へ変えてしまいました。 今回のD&S列車は、 JRKYUSHU DISCOVER TRAIN「或る列車」です。 そもそも「或る列車」って何?まず、この名前が妙に意味深です。 話は100年以上前まで遡ります。 1906年。当時の九州鉄道は、アメリカのブリル社へ豪華客車を発注しました。ところが翌年、九州鉄道は国有化。結果、その豪華客車は九州鉄道の列車として活躍する機会を失いました。後世、この幻の豪華客車は、 「或る列車」 と呼ばれるようになります。 そして鉄道模型の大家・原信太郎氏が製作していた模型をもとに、水戸岡鋭治氏が現代に蘇らせた。それが現在の「或る列車」です。 しかしベースは、まさかの「廃車体」ここからがJR九州らしい。 豪華列車を造るなら、新車を用意しそうなもの。ところが使われたのは、 元JR四国のキハ47 176とキハ47 1505。 しかも2両とも2011年に一度廃車になっています。JR九州へ渡った後、小倉総合車両センターで徹底的に改造。 キハ47 176は、キロシ47 9176キハ47 1505は、キロシ47 3505として復活しました。 ここが凄い。ボロボロの廃車をそのまま延命した、という話ではありません。機関換装をはじめ走行関係にも手を入れ、内外装はほぼ別世界。一度鉄道車両としての生涯を終えたキハ47が、「豪華列車」として車籍まで復活した。なかなか強烈な経歴です。 「キロシ47」という前代未聞さらに形式も面白い。 「キ」は気動車。 「ロ」はグリーン車。 そして、「シ」は食堂車。 つまりキロシ47は、「グリーン車+食堂車の気動車」 キハ40系列として初の「シ」付き形式であり、「キロシ」という形式記号自体も極めて異色の存在となりました。...
続きを読む【JR九州特集・D&S列車編 Vol.6】キハ47形・或る列車。廃車になった国鉄型を“幻の豪華...
一度はJR四国で廃車となった車両をJR九州が譲り受け、豪華な車内を与え、形式まで、 「キロシ47」へ変えてしまいました。 今回のD&S列車は、 JRKYUSHU DISCOVER TRAIN「或る列車」です。 そもそも「或る列車」って何?まず、この名前が妙に意味深です。 話は100年以上前まで遡ります。 1906年。当時の九州鉄道は、アメリカのブリル社へ豪華客車を発注しました。ところが翌年、九州鉄道は国有化。結果、その豪華客車は九州鉄道の列車として活躍する機会を失いました。後世、この幻の豪華客車は、 「或る列車」 と呼ばれるようになります。 そして鉄道模型の大家・原信太郎氏が製作していた模型をもとに、水戸岡鋭治氏が現代に蘇らせた。それが現在の「或る列車」です。 しかしベースは、まさかの「廃車体」ここからがJR九州らしい。 豪華列車を造るなら、新車を用意しそうなもの。ところが使われたのは、 元JR四国のキハ47 176とキハ47 1505。 しかも2両とも2011年に一度廃車になっています。JR九州へ渡った後、小倉総合車両センターで徹底的に改造。 キハ47 176は、キロシ47 9176キハ47 1505は、キロシ47 3505として復活しました。 ここが凄い。ボロボロの廃車をそのまま延命した、という話ではありません。機関換装をはじめ走行関係にも手を入れ、内外装はほぼ別世界。一度鉄道車両としての生涯を終えたキハ47が、「豪華列車」として車籍まで復活した。なかなか強烈な経歴です。 「キロシ47」という前代未聞さらに形式も面白い。 「キ」は気動車。 「ロ」はグリーン車。 そして、「シ」は食堂車。 つまりキロシ47は、「グリーン車+食堂車の気動車」 キハ40系列として初の「シ」付き形式であり、「キロシ」という形式記号自体も極めて異色の存在となりました。...
続きを読む
【JR九州特集・D&S列車編 Vol.5】キハ185系気動車・特急「A列車で行こう」
ジャズを聴きながら、天草へ。国鉄型キハ185系が纏う“大人の旅” 特急「A列車で行こう」 列車の中に、バーがある。窓の向こうには有明海。車内にはジャズ。 そして、その洒落た空間を走らせているのは ”国鉄生まれのキハ185系”です。 熊本から三角へ。 黒と金を纏った観光特急「A列車で行こう」。 派手な速さも、長い走行距離もありません。でも、この列車には、乗った瞬間から旅を変えてしまう“空気”があります。 「国鉄型が、大人の観光列車へ。」 ベースとなったキハ185系は、1986年に国鉄が四国向けに投入した特急形気動車。分割民営化を目前に、軽量なステンレス車体を採用して登場した、国鉄末期を象徴する形式のひとつです。その後、一部がJR九州へ渡り、九州横断特急などで活躍。 そして2011年。まさかの“大変身”を遂げます。 黒とゴールドの車体。木をふんだんに使った車内。ステンドグラス。そして、バーカウンター。 あの合理的な国鉄型気動車が、ここまで色気のある列車になるとは。鉄道車両の第二の人生って、本当に面白いですね。 「“A”に込められた意味。」 列車名は、ジャズの名曲「A列車で行こう」にちなんだもの。 さらに「A」には、Amakusa――天草。Adult――大人。2つの意味が込められています。 列車のテーマは「大人の旅」。 外観は、16世紀の大航海時代のヨーロッパ文化と、古き良き天草をイメージしたもの。かつて南蛮文化が渡来した天草へ向かう列車だからこそ、この少し異国情緒のある世界観がよく似合います。 「列車の中に、“BAR”。」 1号車に設けられているのが、「A-TRAIN BAR」。 飲み物を片手に、ジャズを聴きながら車窓を眺める。御輿来海岸をはじめ、海沿いの景色が流れていく。 特急列車なのに、急いで目的地へ着いてほしいとは思わない。 むしろ、「もう少し、このまま走っていてほしい。」そんな気分になる列車です。 「熊本から、その先の天草へ。」 列車は熊本を出発し、宇土から三角線へ。終点は三角駅。 でも、A列車の旅はここで終わりではありません。 駅の先には三角港。そこから船へ乗り継ぎ、海を越えて天草を目指す。 「列車から船へ。」 単なる“移動”ではなく、乗り継ぐ時間まで旅にしてしまう。...
続きを読む【JR九州特集・D&S列車編 Vol.5】キハ185系気動車・特急「A列車で行こう」
ジャズを聴きながら、天草へ。国鉄型キハ185系が纏う“大人の旅” 特急「A列車で行こう」 列車の中に、バーがある。窓の向こうには有明海。車内にはジャズ。 そして、その洒落た空間を走らせているのは ”国鉄生まれのキハ185系”です。 熊本から三角へ。 黒と金を纏った観光特急「A列車で行こう」。 派手な速さも、長い走行距離もありません。でも、この列車には、乗った瞬間から旅を変えてしまう“空気”があります。 「国鉄型が、大人の観光列車へ。」 ベースとなったキハ185系は、1986年に国鉄が四国向けに投入した特急形気動車。分割民営化を目前に、軽量なステンレス車体を採用して登場した、国鉄末期を象徴する形式のひとつです。その後、一部がJR九州へ渡り、九州横断特急などで活躍。 そして2011年。まさかの“大変身”を遂げます。 黒とゴールドの車体。木をふんだんに使った車内。ステンドグラス。そして、バーカウンター。 あの合理的な国鉄型気動車が、ここまで色気のある列車になるとは。鉄道車両の第二の人生って、本当に面白いですね。 「“A”に込められた意味。」 列車名は、ジャズの名曲「A列車で行こう」にちなんだもの。 さらに「A」には、Amakusa――天草。Adult――大人。2つの意味が込められています。 列車のテーマは「大人の旅」。 外観は、16世紀の大航海時代のヨーロッパ文化と、古き良き天草をイメージしたもの。かつて南蛮文化が渡来した天草へ向かう列車だからこそ、この少し異国情緒のある世界観がよく似合います。 「列車の中に、“BAR”。」 1号車に設けられているのが、「A-TRAIN BAR」。 飲み物を片手に、ジャズを聴きながら車窓を眺める。御輿来海岸をはじめ、海沿いの景色が流れていく。 特急列車なのに、急いで目的地へ着いてほしいとは思わない。 むしろ、「もう少し、このまま走っていてほしい。」そんな気分になる列車です。 「熊本から、その先の天草へ。」 列車は熊本を出発し、宇土から三角線へ。終点は三角駅。 でも、A列車の旅はここで終わりではありません。 駅の先には三角港。そこから船へ乗り継ぎ、海を越えて天草を目指す。 「列車から船へ。」 単なる“移動”ではなく、乗り継ぐ時間まで旅にしてしまう。...
続きを読む
【JR九州特集・D&S列車編 Vol.4】キハ183系1000番台・特急「あそぼーい!」
「列車では静かに」なんて、誰が決めた。 子どもが主役の"走る遊び場"列車に乗ったら、静かに座る。 走り回らない。大きな声を出さない。もちろん、それは大切なことです。 でも… もし列車の方から、「もっと遊んでいいよ」と言ってきたら? そんな発想を、そのまま形にしたような列車がJR九州にあります。 熊本から阿蘇・宮地へ。真っ白な車体に、黒い犬のキャラクターがいっぱい。 その名も、 特急「あそぼーい!」 阿蘇へ行く列車であり、その名の通り、"遊ぼう!"と誘ってくる列車です。 主役は、大人じゃない。「あそぼーい!」最大の特徴。それは徹底して、 "子どもの目線"で作られていることです。 象徴的なのが3号車。 ここには親子で並んで座る専用席、「白いくろちゃんシート」が設けられています。 しかも、列車がどちら向きに走っても、子どもが窓側に座れるよう工夫されています。 普通なら、「窓側代わって!」となりそうなところですが、最初から子どもが特等席。 さらに車内には、絵本や遊びを楽しめる「くろクラブ」や、オリジナルグッズなどを扱う「KURO CAFE」もあります。 移動中、子どもに我慢させる列車ではない。 乗っている時間そのものを、家族の思い出にしてしまう。それが「あそぼーい!」です。 101匹の「くろちゃん」 そして、この列車を語るうえで欠かせないのが、黒い犬のキャラクター「くろちゃん」。車体にも、車内にも、 さまざまな表情のくろちゃんが描かれています。その数は、全部で101匹。 笑っていたり、歩いていたり、寝転んでいたり。お気に入りの一匹を探すのも、この列車ならではの楽しみです。 景色を見る。車内で遊ぶ。くろちゃんを探す。 大人が子どもを列車に乗せる”のではなく、 親子で一緒に列車を遊び尽くす。そこに「あそぼーい!」らしさがあります。 "鉄道ファンにも刺さる" もちろん、「あそぼーい!」は子どもだけの列車ではありません。1号車と4号車には、"パノラマシート"が設けられています。 大きな前面窓の向こうに、線路が伸びていく。運転席に近い感覚で、阿蘇の景色と鉄道そのものを楽しめる特等席です。...
続きを読む【JR九州特集・D&S列車編 Vol.4】キハ183系1000番台・特急「あそぼーい!」
「列車では静かに」なんて、誰が決めた。 子どもが主役の"走る遊び場"列車に乗ったら、静かに座る。 走り回らない。大きな声を出さない。もちろん、それは大切なことです。 でも… もし列車の方から、「もっと遊んでいいよ」と言ってきたら? そんな発想を、そのまま形にしたような列車がJR九州にあります。 熊本から阿蘇・宮地へ。真っ白な車体に、黒い犬のキャラクターがいっぱい。 その名も、 特急「あそぼーい!」 阿蘇へ行く列車であり、その名の通り、"遊ぼう!"と誘ってくる列車です。 主役は、大人じゃない。「あそぼーい!」最大の特徴。それは徹底して、 "子どもの目線"で作られていることです。 象徴的なのが3号車。 ここには親子で並んで座る専用席、「白いくろちゃんシート」が設けられています。 しかも、列車がどちら向きに走っても、子どもが窓側に座れるよう工夫されています。 普通なら、「窓側代わって!」となりそうなところですが、最初から子どもが特等席。 さらに車内には、絵本や遊びを楽しめる「くろクラブ」や、オリジナルグッズなどを扱う「KURO CAFE」もあります。 移動中、子どもに我慢させる列車ではない。 乗っている時間そのものを、家族の思い出にしてしまう。それが「あそぼーい!」です。 101匹の「くろちゃん」 そして、この列車を語るうえで欠かせないのが、黒い犬のキャラクター「くろちゃん」。車体にも、車内にも、 さまざまな表情のくろちゃんが描かれています。その数は、全部で101匹。 笑っていたり、歩いていたり、寝転んでいたり。お気に入りの一匹を探すのも、この列車ならではの楽しみです。 景色を見る。車内で遊ぶ。くろちゃんを探す。 大人が子どもを列車に乗せる”のではなく、 親子で一緒に列車を遊び尽くす。そこに「あそぼーい!」らしさがあります。 "鉄道ファンにも刺さる" もちろん、「あそぼーい!」は子どもだけの列車ではありません。1号車と4号車には、"パノラマシート"が設けられています。 大きな前面窓の向こうに、線路が伸びていく。運転席に近い感覚で、阿蘇の景色と鉄道そのものを楽しめる特等席です。...
続きを読む
【JR九州特集・D&S列車編Vol.3】キハ47形「指宿のたまて箱」
”開いた瞬間、南国の旅が始まる。国鉄型キハ47が演じる竜宮伝説「指宿のたまて箱」” 鹿児島中央駅のホームに現れる、白と黒の奇妙な列車。海側は、まぶしいほどの白。山側は、漆黒の黒。 正面から見ると、その車体は真ん中から見事に二つへと分かれています。まるで、時間を境に姿を変えてしまったかのように。 この列車の名は、特急”「指宿のたまて箱」”愛称は「いぶたま」。 鹿児島中央駅と、砂むし温泉で知られる指宿駅を結ぶ、JR九州のD&S列車です。 しかし、この白黒の姿は、単に目立つためだけのデザインではありません。 モチーフとなったのは、誰もが知る浦島太郎の物語。 黒髪だった浦島太郎が、玉手箱を開けた瞬間白髪の老人へと変わってしまう。 その“黒から白への変化”を、車体そのものを使って表現しているのです。 そして駅に到着し、扉が開くと・・・車体上部から、ふわりと白いミストが噴き出します。 玉手箱から立ち上る、あの白い煙。乗客は列車に乗る前から、竜宮伝説の世界へと誘われるのです。 「指宿のたまて箱」が運行を開始したのは、2011年3月12日。九州新幹線鹿児島ルートが全線開業した、まさにその日でした。 新幹線によって近くなった鹿児島から、その先にある指宿へ。新幹線の速さを、南薩摩の旅へとつなげる役割を託された列車だったのです。 それまで指宿枕崎線では、特別快速「なのはなDX」が観光輸送を担っていました。その役目を引き継ぎながら、単なる速達列車ではなく、乗ること自体を目的にした観光特急として誕生したのが「指宿のたまて箱」でした。 2026年3月には、運行開始から15周年を迎えています。使用されているのは、国鉄時代に誕生したキハ47形。キハ47 8060とキハ47 9079を中心とした編成で、多客期や車両検査時にはキハ140 2066が加わることもあります。 華やかな観光列車の姿をしていますが、その中身に流れているのは、かつて全国の非電化路線を支えた国鉄型気動車の血。 重厚なエンジン音を響かせながら走る姿には、最新型の特急車両にはない、不器用なまでの力強さがあります。古い車両を隠すのではなく、その骨格を生かし、まったく新しい旅の舞台へと作り替える。 これもまた、JR九州のD&S列車らしい魅力なのです。車内へ入ると、国鉄型の面影は一変します。 デザインを手掛けたのは、JR九州の数々の観光列車を生み出してきた水戸岡鋭治氏。 1号車には、客船やヨットにも使われるチーク材。2号車には、南九州産の杉材。 木の香りと温もりに包まれた車内には、一般的なリクライニングシートだけでなく、ボックス席やソファー席、子ども向けのキッズチェアまで用意されています。 なかでも、この列車の特等席といえるのが、海側の窓を向いたカウンター席。列車の進行方向ではなく、錦江湾の方を向いて座る。それだけで、車窓は“通り過ぎる景色”から、“向き合う景色”へと変わります。 鹿児島中央駅を出発した列車は、指宿枕崎線を南へ。市街地を抜けると、やがて車窓いっぱいに錦江湾が広がります。 海の向こうには、鹿児島の象徴・桜島。穏やかな海面。南国らしい光。 湾岸に沿ってゆっくりと走る国鉄型気動車。目的地までの時間は、わずか一時間足らず。 それでも「指宿のたまて箱」では、その短い時間の中に、列車旅の楽しさが凝縮されています。速さを競う新幹線から乗り換え、今度は景色を見るために、あえてゆっくり走る。この速度の変化こそ、指宿への旅の本当の始まりなのかもしれません。 終着の指宿には、砂むし温泉や開聞岳、そして浦島太郎伝説が残る長崎鼻があります。...
続きを読む【JR九州特集・D&S列車編Vol.3】キハ47形「指宿のたまて箱」
”開いた瞬間、南国の旅が始まる。国鉄型キハ47が演じる竜宮伝説「指宿のたまて箱」” 鹿児島中央駅のホームに現れる、白と黒の奇妙な列車。海側は、まぶしいほどの白。山側は、漆黒の黒。 正面から見ると、その車体は真ん中から見事に二つへと分かれています。まるで、時間を境に姿を変えてしまったかのように。 この列車の名は、特急”「指宿のたまて箱」”愛称は「いぶたま」。 鹿児島中央駅と、砂むし温泉で知られる指宿駅を結ぶ、JR九州のD&S列車です。 しかし、この白黒の姿は、単に目立つためだけのデザインではありません。 モチーフとなったのは、誰もが知る浦島太郎の物語。 黒髪だった浦島太郎が、玉手箱を開けた瞬間白髪の老人へと変わってしまう。 その“黒から白への変化”を、車体そのものを使って表現しているのです。 そして駅に到着し、扉が開くと・・・車体上部から、ふわりと白いミストが噴き出します。 玉手箱から立ち上る、あの白い煙。乗客は列車に乗る前から、竜宮伝説の世界へと誘われるのです。 「指宿のたまて箱」が運行を開始したのは、2011年3月12日。九州新幹線鹿児島ルートが全線開業した、まさにその日でした。 新幹線によって近くなった鹿児島から、その先にある指宿へ。新幹線の速さを、南薩摩の旅へとつなげる役割を託された列車だったのです。 それまで指宿枕崎線では、特別快速「なのはなDX」が観光輸送を担っていました。その役目を引き継ぎながら、単なる速達列車ではなく、乗ること自体を目的にした観光特急として誕生したのが「指宿のたまて箱」でした。 2026年3月には、運行開始から15周年を迎えています。使用されているのは、国鉄時代に誕生したキハ47形。キハ47 8060とキハ47 9079を中心とした編成で、多客期や車両検査時にはキハ140 2066が加わることもあります。 華やかな観光列車の姿をしていますが、その中身に流れているのは、かつて全国の非電化路線を支えた国鉄型気動車の血。 重厚なエンジン音を響かせながら走る姿には、最新型の特急車両にはない、不器用なまでの力強さがあります。古い車両を隠すのではなく、その骨格を生かし、まったく新しい旅の舞台へと作り替える。 これもまた、JR九州のD&S列車らしい魅力なのです。車内へ入ると、国鉄型の面影は一変します。 デザインを手掛けたのは、JR九州の数々の観光列車を生み出してきた水戸岡鋭治氏。 1号車には、客船やヨットにも使われるチーク材。2号車には、南九州産の杉材。 木の香りと温もりに包まれた車内には、一般的なリクライニングシートだけでなく、ボックス席やソファー席、子ども向けのキッズチェアまで用意されています。 なかでも、この列車の特等席といえるのが、海側の窓を向いたカウンター席。列車の進行方向ではなく、錦江湾の方を向いて座る。それだけで、車窓は“通り過ぎる景色”から、“向き合う景色”へと変わります。 鹿児島中央駅を出発した列車は、指宿枕崎線を南へ。市街地を抜けると、やがて車窓いっぱいに錦江湾が広がります。 海の向こうには、鹿児島の象徴・桜島。穏やかな海面。南国らしい光。 湾岸に沿ってゆっくりと走る国鉄型気動車。目的地までの時間は、わずか一時間足らず。 それでも「指宿のたまて箱」では、その短い時間の中に、列車旅の楽しさが凝縮されています。速さを競う新幹線から乗り換え、今度は景色を見るために、あえてゆっくり走る。この速度の変化こそ、指宿への旅の本当の始まりなのかもしれません。 終着の指宿には、砂むし温泉や開聞岳、そして浦島太郎伝説が残る長崎鼻があります。...
続きを読む
【JR九州特集・D&S列車編 Vol.1】キハ71系「ゆふいんの森Ⅰ世」
優雅な“森”の名の奥には、国鉄型の鼓動がある。キハ71系「ゆふいんの森Ⅰ世」 九州を走る、個性豊かな観光列車たち。 いまやJR九州といえば、単なる移動手段では終わらない、独創的な列車を次々と生み出す鉄道会社として知られています。 JR九州では、こうした観光列車を「D&S列車」と呼んでいます。 「D」は、特別なデザインを意味するDesign。 「S」は、沿線地域に伝わる歴史や文化、物語を意味するStory。 つまりD&S列車とは、“デザインと物語のある列車”なのです。 しかし、その壮大な物語にも始まりがありました。まだ「D&S列車」という言葉が広く使われるより、はるか前。 国鉄が分割民営化されJR九州が発足してから、わずか2年。九州の鉄道そのものを変える一編成の列車が、久大本線に姿を現します。 1989年3月11日。 特急「ゆふいんの森」。 現在、JR九州から“九州初のD&S列車”と位置付けられている、キハ71系「ゆふいんの森Ⅰ世」の誕生です。 「列車は、目的地へ向かうためだけのものだった」 かつて列車に求められたものは、速さと輸送力でした。決められた時刻に発車し、できるだけ速く、多くの乗客を目的地まで運ぶ。特急列車であれば、普通列車より速く、急行列車より快適に走ることが、その価値だったのです。しかし「ゆふいんの森」は、そこへまったく違う考え方を持ち込みました。 目的地へ到着してから、観光が始まるのではない。列車の扉をくぐった、その瞬間から旅を始める。 掲げられたテーマは、 「列車に乗った時からゆふいん」 でした。博多駅から由布院駅までは、およそ2時間あまり。それまでなら、目的地へ向かうための“移動時間”と考えられていた時間です。しかし「ゆふいんの森」は、その時間さえも観光へ変えました。 深いメタリックグリーンの車体。金色の帯。ヨーロッパの列車を思わせる、優雅で流麗な姿。木の温もりを感じさせる車内。 高い位置に設けられた客室から眺める、久大本線の山々と渓谷。列車そのものが、由布院という目的地の世界観をまとっていたのです。 速さだけではない。新しさだけでもない。 ”乗客の記憶に、どれだけ深く残るか” 「ゆふいんの森」は、列車の価値そのものを変えようとしていました。 「D&S列車の歴史は、この“森”から始まった」 1987年4月、国鉄分割民営化によってJR九州が発足しました。新しく生まれた会社にとって、九州新幹線はまだ遠い未来の話。 受け継いだ車両の多くは国鉄型であり、路線網も設備も、国鉄時代から続くものでした。 では、新しいJR九州らしさを、どこで表現するのか。そこで同社が打ち出したのが、列車そのものに地域の個性を持たせるという発想でした。 九州には、温泉がある。山がある。海がある。神話がある。歴史がある。 そして、それぞれの路線沿線に、そこでしか出会えない物語がある。列車を、ただ地域へ乗客を運ぶ道具として使うのではない。 ”列車そのものを、地域の魅力を伝える舞台にする”...
続きを読む【JR九州特集・D&S列車編 Vol.1】キハ71系「ゆふいんの森Ⅰ世」
優雅な“森”の名の奥には、国鉄型の鼓動がある。キハ71系「ゆふいんの森Ⅰ世」 九州を走る、個性豊かな観光列車たち。 いまやJR九州といえば、単なる移動手段では終わらない、独創的な列車を次々と生み出す鉄道会社として知られています。 JR九州では、こうした観光列車を「D&S列車」と呼んでいます。 「D」は、特別なデザインを意味するDesign。 「S」は、沿線地域に伝わる歴史や文化、物語を意味するStory。 つまりD&S列車とは、“デザインと物語のある列車”なのです。 しかし、その壮大な物語にも始まりがありました。まだ「D&S列車」という言葉が広く使われるより、はるか前。 国鉄が分割民営化されJR九州が発足してから、わずか2年。九州の鉄道そのものを変える一編成の列車が、久大本線に姿を現します。 1989年3月11日。 特急「ゆふいんの森」。 現在、JR九州から“九州初のD&S列車”と位置付けられている、キハ71系「ゆふいんの森Ⅰ世」の誕生です。 「列車は、目的地へ向かうためだけのものだった」 かつて列車に求められたものは、速さと輸送力でした。決められた時刻に発車し、できるだけ速く、多くの乗客を目的地まで運ぶ。特急列車であれば、普通列車より速く、急行列車より快適に走ることが、その価値だったのです。しかし「ゆふいんの森」は、そこへまったく違う考え方を持ち込みました。 目的地へ到着してから、観光が始まるのではない。列車の扉をくぐった、その瞬間から旅を始める。 掲げられたテーマは、 「列車に乗った時からゆふいん」 でした。博多駅から由布院駅までは、およそ2時間あまり。それまでなら、目的地へ向かうための“移動時間”と考えられていた時間です。しかし「ゆふいんの森」は、その時間さえも観光へ変えました。 深いメタリックグリーンの車体。金色の帯。ヨーロッパの列車を思わせる、優雅で流麗な姿。木の温もりを感じさせる車内。 高い位置に設けられた客室から眺める、久大本線の山々と渓谷。列車そのものが、由布院という目的地の世界観をまとっていたのです。 速さだけではない。新しさだけでもない。 ”乗客の記憶に、どれだけ深く残るか” 「ゆふいんの森」は、列車の価値そのものを変えようとしていました。 「D&S列車の歴史は、この“森”から始まった」 1987年4月、国鉄分割民営化によってJR九州が発足しました。新しく生まれた会社にとって、九州新幹線はまだ遠い未来の話。 受け継いだ車両の多くは国鉄型であり、路線網も設備も、国鉄時代から続くものでした。 では、新しいJR九州らしさを、どこで表現するのか。そこで同社が打ち出したのが、列車そのものに地域の個性を持たせるという発想でした。 九州には、温泉がある。山がある。海がある。神話がある。歴史がある。 そして、それぞれの路線沿線に、そこでしか出会えない物語がある。列車を、ただ地域へ乗客を運ぶ道具として使うのではない。 ”列車そのものを、地域の魅力を伝える舞台にする”...
続きを読む