【第2話】西鉄宮地岳線が"水産列車"と呼ばれた時代<吊革に吊るされた他校生>
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今から30年ほど前まで福岡水産高校は、基本的に他校から怖がられる存在だったのですが、いくつかの高校…というより喧嘩自慢のような屈強な精神を持っている男子高校生からは、喧嘩を売られたり狙われたりしていました。
代表格は朝鮮高校の皆さんです。今では流石にないと思いますが、お互いの制服を見ただけで追いかけ喧嘩をする。という事が頻繁にありましたし、自販機で水産高校生がタバコを買っていると、後ろから突然襲われたりもしました。逆に水産生が襲ったこともあったようです。
基本的に双方共にずっと仲の悪い相手という認識でした。
このように、他校とのトラブルが稀に発生するのですが、その中でも衝撃だったのは私立H高校の生徒さんです。
ある時、「番長を出せと言っている奴がいる。たぶんH高校。」という情報が出回りました。
私の時代に番長など存在しません。そのような方が存在したのは私より更に一昔前です。その時は皆、…え?番長??誰の事??…時代が違くない?…番長てww
という感じでした。
この情報は学校中にあっという間に広がり、誰が番長役をやるか。という事でひとしきり盛り上がっていました。ただ、誰も面倒くさがって真面目にこの話を受け止めておらず、2〜3日で皆この事を忘れていました。
そんなある日、いつも通り宮地岳線で帰っていると、とある駅で離合する列車から怒鳴り声が聞こえてきます。とても汚い言葉と共に気合の入った学ランを着た高校生が窓を開けてこちらの列車を睨みつけております。
…???誰?何事?…ん?俺らに言ってるの?
列車はそのまま発車。離合します。後輩が前方車両から飛んできて言います。
「今の奴らですよ!番長出せとか言ってた奴!」
「…は?でも反対側に行ったやん??」
「たぶん津屋崎まで行くつもりじゃないっすか?まぁ、ほとんどの人がこの時間に乗ってるから津屋崎行っても意味ないっすけど。。」
「……うん。そうやね…何やったん…あいつ……」
ネタの提供をしてくれたとして、ひとしきり話題で持ちきりとなります。ただ、よほど水産生徒を敵対視していたのでしょう。その翌日も、その翌日も同様の光景が続きます。
「…てかさぁ、あいつら……文句あるならこの電車に乗り込んでくれば良くない?なんでいっつも反対側の電車に乗っとん?」
結局彼は、離合列車から毎日のように罵声を浴びせてくる存在として水産生徒を怒らせてしまいます。
ある日、水産の生徒はいつもより2本ほど遅い時間帯の電車に集団で乗り込む事になります。
そう。彼を制裁する日がやってきたのです。そして…
「あ!!アイツや!!!!」
とある駅のホームに立っていた彼は紛れもなく水産高校生に罵声を浴びせていた本人でした。あっけなく捕まり電車の中に連れ込まれます。そして後方車両へ連行。
「番長とタイマンしてぇんやろ?俺とせぇ」
「俺が番長たい。タイマンせぇ。」
「いや、違うやろうが!俺が番長たい!」
「いやいやまて!お前ら!俺やろうが!」
訳のわからない痴話喧嘩が数人で始まります。が、喧嘩を売ってきた当の本人は青ざめておりいつもの元気がありません。しかもすでに電車の床に正座させられています。
「で?どうすると?誰かとタイマン張ると?俺がレフリー役しちゃるよ。はい!立って!!」
何故か仕切り始める目立ちたがり屋。
「……すみません…勘弁してください…」
すでに半泣きの他校生。
残念な事に和白で下車した私には彼が最後どうなったのか見届けられませんでしたが、忘れもしないのは、電車の吊革に手を固定され、ズボン(気合の入ったボンタン)を取り上げられてパンツだけになり、泣かされていた…という光景です。
翌日からは通常通りの水産列車になり、罵声を浴びせてくる他校生もいなくなりました。
めでたしめでたし。
次回は「全力でキレてくる西鉄運転士」をお送りします。
お楽しみに。
<寄稿記事 福岡県在住 Y.N様>
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